新生仔ゲノム編集によるプロテインC欠損マウスの治癒
・論文:Cure of congenital purpura fulminans via expression of engineered protein C through neonatal genome editing in mice. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 2024 (in press) doi.org/10.1161/ATVBAHA.123.319460
・概要:血中の血栓形成を阻害する(抗凝固因子)プロテインCのアミノ酸配列を改変し、活性体として発現させることを可能にしました。また、CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集により、改変型プロテインC配列をゲノムに挿入することで、生後に重篤な血栓症で死亡してしまうプロテインC欠損マウスの治癒に成功しました。
ゲノム編集とiPS細胞を用いた血友病A遺伝子変異の同定
・論文:Genome editing of patient-derived iPSCs identifies a deep intronic variant causing aberrant splicing in hemophilia A. Blood Advances 2023;7(22):7017-7027. doi.org/
10.1182/bloodadvances.2023010838
・概要:エクソン内の遺伝子に原因を同定できない血友病A患者のイントロン深部(イントロン14)の1塩基の置換が異常スプライスを引き起こすことで血友病Aを発症することを、患者由来iPS細胞にゲノム編集技術をくみあわせて証明しました。
ゲノム編集のための最小のはさみ
・論文:An AsCas12f-based compact genome editing tool derived by deep mutational scanning and structural analysis. Cell 2023:186; 186(22):4920-4935. doi.org/10.1016/j.cell.2023.08.031
・概要:ゲノム編集に用いることができるわずか422アミノ酸からなる小型のAsCas12fの改変に成功し、AAVベクターに搭載して血友病Bマウスのゲノム編集治療が可能になることを示しました。
新規改変AAVベクターAAV.GT5を用いた血友病遺伝子治療に対する大動物を用いた検討
・論文:Efficient Gene Transduction in Pigs and Macaques with the Engineered AAV Vector AAV.GT5 for Hemophilia B Gene Therapy. Molecular Therapy – Methods & Clinical Development 2023:30;502-514.
doi.org/10.1016/j.omtm.2023.08.016
・概要:血友病に対するAAVベクターによる遺伝子治療法は欧米で実際に承認された製剤も出ました。本論文では、ブタやカニクイザルなどの大動物を用いて、新規改変AAVベクターAAV.GT5は肝への遺伝子導入効率が高く、肝の近傍の血管からベクターを投与すると、低いベクターで効果的な肝臓への遺伝子導入ができることを明らかにしました。
重症血友病B患者由来iPS細胞の点変異を塩基編集ゲノム編集技術で修復
・論文:PAM-flexible Cas9-mediated base editing of a hemophilia B mutation in induced pluripotent stem cells. Communications Medicine 2023;3:56.
doi.org/10.1038/s43856-023-00286
・概要:ゲノム編集を可能にしたCRISPR-Cas9を利用して、特定のDNA変異を書き換える塩基編集(CからT、AからG)という技術が注目されています。本論文では、この技術を用いて重症血友病B患者のiPS細胞、及びこの疾患点変異をもつ細胞株や遺伝子改変マウスを作成し、実際に疾患点変異の塩基編集治療によって、血友病Bで欠損する血液凝固第IX因子が上昇することを明らかにしました。
異なるAAV血清型を用いたAAVベクターの再投与
・論文:Successful liver transduction by re-administration of different adeno-associated virus vector serotypes in mice. J Gene Med. 2023;25:e3505.
doi: 10.1002/jgm.3505.
・概要:AAVベクター投与後には中和抗体が発生して再投与ができないことが知られています。本論文では、種々のAAVベクターを投与後に生じる中和抗体は比較的血清型(種類)に特異的であり、異なるAAVベクターを用いると再投与が可能であることをマウスで明らかにしました。
国内血友病患者さんの抗AAV抗体の調査
・論文:The seroprevalence of neutralizing antibodies against the adeno-associated virus capsids in Japanese hemophiliacs. Molecular Therapy – Methods & Clinical Development 2022;27:404-414.
doi.org/10.1016/j.omtm.2022.10.014
・概要:AAVベクターによる遺伝子治療法が注目されていますが、AAVに対する抗体を保有しているとAAVベクターをもちいた遺伝子治療の効果が減弱します。本研究では、国内の健常人100名、血友病患者216名の血中の中和抗体を測定し、国内では全体の20-30%が陽性で、特に60歳以上の方に陽性率が高い傾向があることを明らかにしました。
高精度な抗AAV中和抗体の測定法
・論文:A sensitive and reproducible cell-based assay via secNanoLuc to detect neutralizing antibody against adeno-associated virus vector capsid. Molecular Therapy – Methods & Clinical Development 2021;22:162-171.
doi.org/10.1016/j.omtm.2021.06.004
・概要:AAVベクターを用いた遺伝子治療の候補者を適切に選択するために、患者さんの抗AAV抗体の力価を適切に検査することが重要です。本研究ではAAVベクターに搭載するレポーター遺伝子として、ホタルルシフェラーゼの100倍の発光が得られるナノルシフェラーゼを用い簡便、かつ再現性の高いアッセイ系を構築しました。
第VIII因子産生細胞の同定
・論文:Characterization and visualization of murine coagulation factor VIII-producing cells in vivo. Scientific Reports 2021;11:14824.
https://doi.org/10.1038/s41598-021-94307-0
・概要:凝固因子は肝臓で産生されるタンパク質ですが、肝硬変でも第VIII因子は低下せず、第VIII因子産生細胞の起源は明確では有りませんでした。我々は第VIII因子産生細胞がGFPで光るノックインマウスを作製し、第VIII因子が肝臓類洞内皮細胞でのみ発現し、血小板膜上に発現するCLEC-2というタンパク質を発現することを明らかにしました。
血友病BマウスのCRISPR-Cas9によるゲノム編集治療に成功
・論文:CRISPR/Cas9-mediated genome editing via postnatal administration of AAV vector cures haemophilia B mice. Scientific Reports 2017;7:4159.
https://doi.org/10.1038/s41598-017-04625-5
・概要:血友病Bは第IX因子が遺伝的に欠損する出血性疾患です。CRISPR/Cas9を搭載したAAVベクターを用いて、マウス肝臓に効率よく二本鎖DNAの切断が生じることが可能でした。また、修復用の正常の第IX因子DNAをもつAAVベクターを同時に投与することで、血友病Bマウスの血中凝固因子活性が上昇することを見出しました。